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人口を有する。長年自動車の渋滞と環境問題に悩まされてきたが、1994年11月に市内中心部を南北に貫通するトラムが開業し、かなり街の交通の形態が変化した。このトラムは、運行路線、形態もさることながら、車両デザインが極めてモダンで、未来志向のものであり、世界中の注目を浴びている。今回は、日曜日のバリからの日帰り、また天候も雨という悪条件であったが、視察を行い、交通機関の乗降性という点で、車両構造ならびにバスとの乗り換え利便性などに注目して見てきた。以下、その概要と、感想を述べる。
路線は市の北西部のハウテピヤマイロンから、国鉄駅、市内中心部をへて、南部のバガーセに至る約10kmで途中に16の駅が設置されている。国鉄駅周辺のみ地下区間であるが、それ以外は地上で、一般道路上も専用の区分がなされており、自動車に邪魔される部分はほとんどない。一部専用軌道の部分は、騒音低下と美化を兼ねて、芝生が植えてあり、非常にきれいである。いくつかの駅がバスとの乗り換え駅となっているが、いずれも乗客の利便性を第一に考えた構造になっており、特にロートンデ駅はホームの対面がバス乗り場になっている、国鉄駅周辺は川と鉄道と交差することから地下区間となっているが、地下駅であるガラセントラル駅には、エレベータとエスカレータが完備しており、上下移動も容易である。市内中心部のホムメデファ駅には特徴的な円形の上屋があり、街のシンボルにもなっている。中心部より南部は、広い道路の中央部を走行する区間が多い。終点のバガーセには、大きなバスターミナルが設けられ、やはり上下移動なしにバスとドラムの乗り換えが可能である。
車両は、前述のように極めて斬新なデザインの低床車であるが、これはイタリアのデザイナの作で、イタリアのメーカが製造予定であったものが、会社の倒産により、ABB社(現在のADトランツ)が肩代わりすることになり、同社の英国ダービー工場で製造された。車内外のデザインが忠実に製造された点が感心させられるが、さらに興味深いのは、3つの箱とそれらを結ぶ2つの小箱、さらに2つの先頭部の計7つの箱が連節車としてつながっており、曲線部ではそれぞれの箱が偏向するため、いも虫のような印象である。台車は先頭部と中央部の座席下に隠され、車内は100%低床である。大きな窓と大きな扉も特徴的であり、車内は明るく気持ちがよい。
料金は一律7フランで、割安な回数券、週間/月間定期、一日乗車券なども券売機で購入できる。さらにバスとの乗り継ぎ割引もある。改札、運転手による運賃収受もなく、乗車券購入は乗客の良心にまかされており、たまに抜き打ちの車内検察があり、無札であると大幅な罰金を請求されるのは、欧州各地と同様のシステムである。
訪問日が日曜日であったため、基本的に商店が閉まっており、にぎわっているのは観光客の集まる大聖堂周辺のみであったが、比較的乗車率は良好であった。デパート、商店が並ぶ中心部の平日のにぎわいぶりは、相当のものと予想される。手元の資料によると、市民はトラム開業に際して拍手をしたという。また、世界一のトラムであると誇りに思う市民が多いとも記されているが、もっともなことであると納得できた。このラインAが好評のため路線の伸延や、別路線の建設も予定されているが、建設費が極めて高いので、慎重に進められているようである。

 

(5)ZF社
ZF社は、ドイツ南部のボーデン湖のほとりにあるフリードリヒスハーヘンという街に

 

 

 

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